読書は一度ハマると抜け出せなくなるほど面白い、古くからある娯楽の一つ。しかしその一方で
という方も少なくありません。読むまで好みか分からない上、集中力もいる読書。なんだか高尚な趣味にも思えて敬遠しがちですよね。
そこで今回は「好みがわからない」「集中力がない」という方におすすめの短編集を4つ紹介していきます。
数ページから十数ページで終わる短編集なら丸々読み切らなくてもOK!気になる話のみを好きなだけ読める、読書初心者にもピッタリの作品スタイルです。
さらに読書の最適なタイミングや、より楽しんでいく方法も解説しています。自分が続けやすいポイントを抑えながら素晴らしき読書の世界にトライしてみてくださいね!
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読者初心者におすすめしたい至高の短編集4選
読書を楽しみたいのなら、まずは自分の好みや好きな作家さんを見つけていきましょう。
短編集なら一作品が短い上にその短さから、書き手の作風や個性が色濃く描かれる傾向にあるため、推し作家や自分の好みを見つける手立てになります。
とはいえ続けて読んでいくと、苦手だと感じたりいまいち入り込めないと思ったりする作品もあるかもしれません。
でも複数の作品が収録されている短編集であれば、思い切って飛ばして大丈夫。自分の“好き”にトコトン忠実になって読み進めることができます。
今回は毛色の異なる4つの作品をご紹介。
- 若手から大御所まで古今東西の人気作家をまとめた【短編工場】
- 昔話で事件を起こすミステリー短編集【むかしむかしあるところに死体がありました。】
- キュートでブラックなナンセンス作品集【嵐のピクニック】
- 生と死をテーマにしたファンタジー・ホラー【朝が来るまでそばにいる】
どれもユニークでバラエティーあふれるものばかり。ここでの解説を参考に、自分が気になる一冊をぜひ見つけてみてください。
人気作家陣の作品をつまみ食い「短編工場」
月刊小説誌「小説すばる」掲載の短編作品から厳選された12作を楽しめる、カラフルでポップな作品展覧会。
人気作家ばかりなだけあって、それぞれが短編ならではの力強いオリジナリティーを発揮しています。
『かみさまの娘』桜木紫乃
『ゆがんだ子供』道尾秀介
『ここが青山』奥田英朗
『じごくゆきっ」桜庭一樹
『太陽のシール』伊坂幸太郎
『チヨ子』宮部みゆき
『ふたりの名前』石田衣良
『陽だまりの詩』乙一
『金鵄のもとに』浅田次郎
『しんちゃんの自転車』荻原浩
『川崎船』熊谷達也
『約束』村山由佳
本当に一つ一つが全く異なる質感と色合いを発揮しているため、好きな作家さんを見つけたり意外な好みを知れたりできる点もこの短編集のポイント。
どの話も短い時間で読み終われるため、読者初心者にも易しい構成となっています。
ある意味好き嫌いがハッキリわかれやすい短編集とも言えるかもしれませんが、苦手な作品は読み飛ばしてOK。
読書に慣れてきた頃にもう一度チャレンジしてみると、また違った感想が抱けるのもこの短編集の醍醐味です。
同じ集英社文庫編集部からはこのほかにも、「少年」をテーマにした『短編少年』や、16本の作品が楽しめる『短編復活』が登場しています。
短編工場の読みやすさが気に入った方は、ぜひこちらもチャレンジしてみてくださいね。
昔話×本格ミステリー「むかしむかしあるところに死体がありました。」
2020年の本屋大賞にもノミネートされた、青柳碧人氏による本格ミステリー短編集。
アリバイにダイイングメッセージ、密室トリックとミステリーの王道をゆく物語ながら、その舞台は誰もが知る昔話の世界というのがこの作品の面白いポイントです。
「みんな仲良し」「ずっと友達」「愛は美しい」
そんな昔話あるあるを切り捨てて仕上げられた本作は、人間ドラマの愛憎入り乱れる本格的なミステリーへと変貌。
幼い頃には語られなかった人間関係の難しさをとことん晒し上げるようなブラックユーモアぶりが痛快な作品集です。取り上げている昔話は以下の5つ。
「一寸法師の不在証明」(一寸法師)
「花咲か死者伝言」(花咲かじいさん)
「つるの倒叙がえし」(つるの恩返し)
「密室龍宮城」(浦島太郎)
「絶海の鬼ヶ島」(桃太郎)
馴染みある話をベースに進んでいくため、読書初心者にもかなり読みやすい仕上がりとなっています。
気に入った方は西洋童話版『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』もご一緒にどうぞ。
奇妙な味の短編集|常識を覆す「嵐のピクニック」
本谷有希子という化け物のような感性を持つ作家をご存知でしょうか。(褒めてます)
「嵐のピクニック」は、亡霊病なる架空の病や自転車のサドルとの恋物語など、本谷有希子作品におけるダークでキュートな視点がふんだんに盛り込まれた作品集です。
新しい話を開く度に常識や現実が派手に吹き飛ばされていく快感も本谷有希子ならでは。
「嵐のピクニック」ではこれら全ての読書体験を味わうことができます。ゾクッとするような読み心地ながら、どの話も恐ろしく面白く、確実にどこかが狂っているあべこべな世界。
それでも妙な現実感と手触りを楽しむことができるこの作品に収録されたタイトルは以下の通りです。
- アウトサイド
- 私は名前で呼んでる
- パプリカ次郎
- 人間袋とじ
- 哀しみのウェイトトレーニー
- マゴッチギャオの夜、いつも通り
- 亡霊病
- タイフーン
- Q&A
- 彼女たち
- How to burden the girl
- ダウンズ&アップス
- いかにして私がピクニックシートを見るたび、くすりとしてしまうようになったか
どうでしょうか。
タイトルを眺めてみても一つとしてその内容をイメージすることができません。さすが本谷有希子。(褒めてます)
一度読み始めたら最後、読み終わるまで降りられないジェットコースター体験。ブラックユーモアや奇妙な味をお好みの方にはぜひ挑戦していただきたい作品です。
個人的には一人の人生を見終えたかのような「亡霊病」が切なく笑えて好きでした。
背筋のピリつく短編集「朝が来るまでそばにいる」
誰でも一度は、寂しくてどうしようもなく泣きたくなる夜を経験したことがあるのではないでしょうか。
そんなとき寄り添ってくれるものには、その正体が何であれ、しがみつきたくなるものかもしれません。
「朝が来るまでそばにいる」は生と死をモチーフに描いた朝瀬まる氏の短編集。その独特な手触りに最初は戸惑うものの、とても幻想的かつリアルな息遣いに、恐ろしくも寂しい不思議な気持ちにさせられます。
〈暗闇に包まれる夜〉と〈光の差し込む朝〉が生と死のテーマに重なる今作品。各話の主人公は文字通りそれぞれの夜と朝を迎えることになるのですが、結末は六話六通り。
- 君の心臓をいだくまで
- ゆびのいと
- 眼が開くとき
- よるのふち
- 明滅
- かいぶつの名前
[生と死][朝と夜][自己と他者]の境界があいまいになり、引きずり込まれるような物語の数々は圧巻のクオリティ。特にあまりにも見たことのない視点で描かれる、『かいぶつの名前』はぜひ読んでいただきたい名作です。
人の暗い部分に光を灯すような恐ろしくも優しい世界を、ぜひ一度ご堪能ください。
読書におすすめのタイミング
読書習慣のない人がまず悩みがちなのが読書のタイミング。指先一つで気軽に楽しめるスマホやテレビとは違い、読書は自分で本を持ちページをめくっていく意思と動作が必要になります。
本を用意したはいいけれど、開くタイミングが見つからないという方も多いのではないでしょうか。
ここでは読書初心者だった私が試行錯誤する中で見つけた、心地よい読書タイミングをご紹介。最適な時間で最高の読書体験を楽しむためにも、ぜひお気に入りの時間を見極めて読書の世界に没入してみてくださいね。
通勤・通学中の電車内
王道のタイミングが通勤通学の移動時間です。
周りに人がいたり立った状態のままであったりと、あまり集中できないようにも思えますが、実はそんな喧騒の中こそ読書が活きる絶好のタイミング。たくさんの情報があふれる中で、本が現実逃避の手助けをしてくれます。
加えて通勤通学中の電車内はかなり静かである点も特徴です。スマホや新聞、読書に居眠りとみな思い思いの過ごし方をしているため、人が多くいたとしても、他人に一切干渉されない心地よい時間であるといえます。
まれに友達同士で話していたり電話をかけていたりする人もいるかもしれませんが、そんなときは音楽を味方につければ大丈夫。
YouTubeなどには読書用のBGMなどもありますので、物語に集中するためにも積極的に使っていきましょう。
ただし電車内読書は、あまりにハマってしまうと降りるタイミングを逃してしまいがちですので、アラームなどを設定しておくと安心です。
寝る前のリラックスタイム
寝る前の時間は身体も心も一番リラックスしているタイミング。一日にやることを全て終えて、あとは寝るだけとなれば、自然と気も緩んでいきます。
また寝る前の読書には、寝付きを良くしてくれるという嬉しい効果も。
ブルーライトを浴びてしまうスマホ・テレビよりも刺激を受けにくく、一日の終わりで仕事や家事などに気を遣う必要もないため、頭全体をつかって物語世界をイメージしていくことができます。
夜の寝付きが悪い
スマホを付けてダラダラしてしまう
眠くなるまで動画を見ている
といった習慣のある方は、ぜひ一度、寝る前のスマホタイムを読書に置き換えてみてはいかがでしょうか。
ただし先が読めないミステリーものや、カーテンやドアのすき間が気になるホラー系はあまりおすすめしません。ドキドキソワソワしてしまい逆効果でした。(実体験)
もっと読書を楽しむ方法
読書に慣れてきたら、今度は違った楽しみ方を取り入れてみるのもおすすめです。今回ご紹介する方法は以下の3つ。
- 読書アプリで感想をシェアする
- 好きな言葉やセリフをメモしてみる
- 好きな人のおすすめを調べる
最初の2つは、これまでインプットだけだった読書習慣をアウトプットしていく方法です。読書は作品から何かしらのメッセージを受け取るものですが、それに対する感想や意見は人によって大きく異なります。
その違いを知ったり、自分の思いを具現化していったりすることで自分に詳しくなれるのも読書の醍醐味です。
また、たくさんの考え方・受け取り方を知ることで、読書体験から自分の豊かさに繋げていくこともできます。
3つ目は自分が好きな生き方や考え方をしている人のおすすめ本をピックアップしていく方法。対象は友達や家族はもちろん、芸能人やスポーツ選手なんでもかまいません。
自分が好感を抱いている人のおすすめを読むことで、自分では選ばなかった作品に出会い、新しい価値観を知るキッカケとなります。
それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
読書アプリで感想をシェアする
映画やドラマなどの感想をレビューする場所があるように、読書にも感想を人とシェアできるアプリがあります。
ここでは年齢も性別も生き方もバラバラな人々が、ただ【同じ一冊の本を読んだ】という共通点のみで集まるため、色々な価値観による意見が知れる点がポイントです。
ときにはコメントのやり取りなどを通じて、誰かから共感を得たり意見を交換したりすることも。自分の価値観をアップデートする場所としても活用することができます。
最初は「読書の感想なんてどう書けばいいのか分からない」と思ってしまうかもしれませんが、ここは学校の読書感想文とは違ってルールは無用。
拙くともまとまっていなくともOKなので、思い切って自分の中に積もったものを言葉にしていきましょう。アウトプットしていく中で、自分の好きや嫌いがきっと分かってくるはずです。
好きな言葉やセリフをメモしてみる
これは少し玄人好みの方法ですが、作品によってはそのときの自分に強く刺さる言葉やセリフが登場する場合があります。
そんなときには、自分の中で輝いた言葉をぜひメモにして残してみてはいかがでしょうか。
それはきっといまの自分に足りていないものであったり自分が最も大切にしていることであったり、無意識の内に自分が求めている言葉かもしれません。意識的に拾っていくと、客観的に自分を見つめ直すヒントにも繋がります。
メモするのが面倒なときは、思い切って線を引いたり付箋を付けてみるのもおすすめです。これは自分で購入した自分だけの本だからこそできる方法になります。本を買う楽しみにもなりますので、ぜひ気になる方はチャレンジしてみてください。
好きな人のおすすめを調べる
友達でも芸能人でもアスリートでも、素敵に感じる他人の存在はとても貴重でかけがえのないものです。
生き方や考え、センスに容姿と、自分にはないものを持つ人はこの世にごまんといるはず。それなのにその人に惹かれるのには「いま自分に欲しいもの・足りないものを持っている人だから」と私は考えています。
もしそんな憧れの人がいるのなら、今すぐその人の好んでいる本をチェックしてみましょう。
そこまで思い付く人がいないという場合は、以下のような選び方がおすすめです。
!芝居が素敵だと思う俳優
!音楽を聞いているアーティスト
!考え方や生き方がうらやましく思う友達
読書は読む人に新しい考えや思いを与えて、その人の感性となっていきます。誰かに影響を与えたものをそっくりそのまま享受できるのも読書の醍醐味です。
読書が苦手な原因は「集中力不足」と「好みのズレ」
読書は読めば読むほど自分の好みに詳しくなり、自分が好きな作家を見つけやすくなる、経験値型の趣味といえます。そんな読書にのめり込めない大きな要因は「集中力不足」と「好みのズレ」がほとんどです。
たとえば国語のテストで物語があったとき、スイスイ読めるときもあれば全然頭に入ってこないときもあったのではないでしょうか。それもそのはず一言で物語といっても、その中にはジャンルから語り口のタイプ、時代設定まで多種多様なスタイルが存在しています。
読書を好きになるにはまず好きな本を見つけることから。集中力がないのなら、短い物語の詰まった短編集からスタートすれば万事OKです。
自分が楽しいことを最優先事項にして、読書の味をゆっくりと楽しんでいきましょう。