確定申告はフリーランスにとって避けては通れない、年に一度の特大イベント。もちろん役者も雇用契約にない限りは、個人事業主として申告すべき立場にあります。
しかしそこで面倒なのが、経費にあたる支出の計算です。ライターや個人経営の飲食店などに比べて、俳優業の経費はあいまいなケースが多く、どこまで計算していいか分からない人も多いかもしれません。
そこで今回は、役者として確定申告を何度も行っている私の経験を踏まえて、【役者の経費にあたる項目】をまとめてみました。税務署に直接確認したときの回答や、項目ごとの注意点にも触れていますので、合わせてチェックしてみてください。
なお今回は個人の例を参考として記述しています。税理士違反行為にあたらない旨は税務署に確認済みですが、個別の質問にはお答えしかねますのでご了承ください。また申告における根拠とはなりません。「これは経費になるか」といった具体的かつ個別的な内容判断については所轄の税務署にて必ずご確認ください。
経費にできるかどうかのポイント
経費にできるかどうかのボーダーラインは、実は明確には定まっていません。
ここでは実際に税務署に確認した際の回答と経費計上のポイントをお伝えします。
税務署の回答
基本的に確定申告についての問い合わせは、税務署が対応しています。次は実際にわたしが税務署に問い合わせたときの大まかな会話です。
このあとも色々具体例を出してみましたが、「経費になります」と答えられたものはほとんどありませんでした。必要経費はケースによって変動が大きいため、税務署が明言することは難しいようです。
役者活動にかかせないものか
とはいえ、確定申告で経費計上できるものはなるべく申告していきたいですよね。
税務署から明確な回答は得られませんでしたが、経費にできるかどうかの考え方については、次のポイントが伝えられました。
- 必要経費=収入を得るための支出
- 経費にするのであれば理由が必須
- 家賃など私用分があるものは按分する
役者は資格や線引きがない分、あらゆるものが経費に含まれる可能性を持っています。経費に含むかどうか迷った際には、税務署に説明できる理由を必ず抑えておきましょう。
確定申告ではどんな内容の支出であっても細かく情報を残しておくことが、最も大切なポイントです。
役者の経費にできるもの7選
では早速役者が経費にできるものについて見ていきましょう。ここで紹介する項目は、以前わたしが経費として計上できたものです。
ただしここで挙げた例でも、税務署によっては経費と認めない場合もあります。少しでも不安なときは必ず所轄の税務署に問い合わせていきましょう。
また経費となるためには役者業で収入を得るために必要である場合に限ります。私用での出費は認められませんので、くれぐれもご注意ください。
①交通費
オーディションや撮影現場、舞台の稽古と、交通費は役者にとって欠かせない出費です。オーディション会場への交通費も、収入を得るために払った経費にあたりますので、必ず抑えておきましょう。
なお電車やバスでは、SUICAなどのICカードで支払う方も多いかもしれません。チャージした際の領収書を保存する方法もありますが、個人的には交通費メモを利用するのがおすすめです。交通費メモを使えば、目的地や利用理由もまとめて記載することができます。
さらにアプリであれば、領収書にいちいち書き込む手間もありません。データは定期的に保存して、確定申告に備えておくと安心です。
②稽古着・シューズ
舞台の場合には、稽古用の衣類やシューズを購入する場合もありますよね。私用で使うことがないのであれば、こうした出費も立派な必要経費です。
- 何の作品に向けて用意したものか
- 使用用途
上記を明確にして、領収書を保管しておきましょう。
③化粧品・メイク用品
化粧品やメイク用品も、消耗品費として計上することが可能です。具体的には次の内容が挙げられます。
- スキンケア商品
- シャンプー、トリートメントの購入費
- ネイルケア利用料
- 撮影や舞台で使ったメイク用品
こちらもやはり経費になるかどうかのポイントは、役者業を継続するために必要な出費であるかどうかになります。
役者業では、肌や髪、爪の美しさも商品価値を左右する一つの要素。美容のために払った支出は、必ず残しておくのがおすすめです。
ちなみに過去、わたしが経費として計上OKとなったものは、次のとおり。
- ニキビ用のケア用品
- 日焼け止め用品や日傘
- 撮影用のファンデーション
- 舞台用に購入したマニキュア代
ぜひ一例として参考にしてみてくださいね。
④美容院代
舞台や撮影が決まった際には、役柄に合わせたヘアスタイルをキープしなければいけませんよね。パーマやカラーも含めてヘアスタイルキープのための美容院代も、役者にとっては必要経費です。
また、作品が決まっていなくとも事務所などに所属していると、ヘアスタイルを指定される場合があります。この場合も美容院代は事業のための経費にあたりますので、必ず抑えておきましょう。
ただしフリーランスで活動する場合には要注意。事務所の指定や作品での設定もないようであれば、経費として計上するのは難しくなります。美容院代を経費にできるのは、ヘアスタイルをキープするための理由がある場合のみと覚えておいてください。
⑤娯楽鑑賞費(映画・演劇)
普通の人にとってはただの娯楽となるエンタメも、役者にとっては俳優業で収入を得るための勉強になります。向学のためであれば、映画鑑賞費も観劇費も立派な必要経費です。映画や演劇のチケットを購入する際は、必ず領収書を取っておきましょう。
また最近では、動画見放題サービスも多く登場していますね。もし作品を見るために加入しているようであれば、こちらも経費として計上することが可能です。
確定申告の際には、娯楽鑑賞に費やしている費用もぜひチェックしてみてください。
⑥フィットネスジム利用料
美容と同じく体型キープも、役者にとっては事業で収入を得るために欠かせない要素といえます。フィットネスジム利用料は必要経費となりますので、ぜひ領収書は残しておきましょう。
また、最近では新型コロナウイルスの影響で、自宅用のフィットネス用品を購入することも増えています。もちろんこうした支出も、スタイルをキープするために必要な経費です。実際にわたしも体を絞らなければならない撮影中にジムの閉鎖を受けて、次の用品を購入し、必要経費として申告したことがあります。
- ダンベル
- 筋トレ用マット
- 筋膜ローラー
経費になるかどうか気になる場合は、役者業で利益を得るために必要な出費かどうか、がポイントです。
「あってもなくても事業に支障がないのなら経費にはならない」と覚えておきましょう。
⑦レッスン費用
意外と盲点なのが、養成所やダンスレッスンなどのレッスン料です。高額になることが多い項目ですが、入会が自身の意思にかかっているため、経費にできないと考えてしまう方も多いかもしれません。
しかし、養成所やダンスレッスン、ボイストレーニングなどはまさに役者で収入を得るための必要経費。確定申告で経費計上しない手はありません。
レッスン料が発生している場合には、必ず領収書を抑えておきましょう。
なおやり方を理解すれば、役者は自宅でもセルフレッスンが可能です。資金はないけど何かしら稽古を付けたいと思う方は次の方法を試してみてくださね。
下積み時代こそ経費計上するべき
今回ご紹介した項目は以下のとおりです。
- オーディションや現場への交通費
- 稽古用の衣類やシューズ
- スキンケア商品
- シャンプー、トリートメントの購入費
- ネイルケア利用料
- 日焼け止め用品や日傘
- 美容院代
- 娯楽鑑賞費(映画・演劇)
- 動画見放題サービスの月額利用料
- フィットネスジム利用料
- 自宅用のフィットネス用品
- レッスン費用
経費の定義があいまいな役者業ですが、その分経費計上できるものは多くあります。基本的には、次のポイントを抑えておくことが大切です。
役者としての商品価値を保つもの
役者としての能力を上げるもの
役者は下積み時代にあればあるほど、出費項目が多い職業。オーディションなどで踏ん張っているときには経費>収入となることもほとんどです。実際ぼくは経費にできるかどうか曖昧なとき、税務署に毎年相談させてもらっています。
確定申告こそ節税のチャンスとなりますので、経費にできる項目は日頃からこまめにチェックしておきましょう。