役者を目指すとついつい映画やドラマでのインプットに偏りがち。とはいえ正しい教科書がある訳でもなく、何もできない日々に焦りを感じてしまう人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は役者にオススメしたい本をジャンル別に5つ紹介していきます。
- 「俳優になりたいあなたへ」
- 「SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術」
- 「イヴァナ・チャバックの演技術:俳優力で勝つための12段階式メソッド」
- 「類語辞典シリーズ」
- 「蜜蜂と遠雷」
演技術、役者としての心得を学びたい方は①~③・役作りを深めたい方は④・才能について描かれた作品を読みたい方は⑤を見ていきましょう。
内容のほか各ポイントやオススメしたい人の特徴にも触れています。映像作品だけでなく書籍からのインプットにもぜひチャレンジしてみてくださいね。
役者におすすめしたい5冊
「俳優になりたいあなたへ」鴻上尚史
鴻上尚史さんは日本が誇る劇作家の一人。いまや伝説となった劇団「第三舞台」の代表としてキャリアをスタートし1994年上演の「スナフキンの手紙」にて岸田國士戯曲賞を受賞、一躍時の人となりました。現在では、株式会社サードステージ代表取締役・日本劇作家協会会長として幅広く活躍されています。
「俳優が傷つけば傷つくほど、観客は感動する」
そんな彼がつづった本書はまさに俳優入門書。俳優のなり方やいい演技の定義、ルックスの重要性や夢を追う年齢について、厳しくも優しく正直に描かれています。
内容は架空の俳優初学者の男女2人とQ&Aを交わしていく対話形式です。高校生に俳優という職業を説明する形式のため、堅苦しい演技論が苦手な人でも気楽に読むことができます。
- 俳優になるにはどうすればいいのか
- いい演技とは何か
- ルックスは本当に重要なのか
- 夢を追うのに年齢制限はあるのか
誰だって一度は夢を追う中でこのような疑問を持ったことがあるはず。俳優を夢見る人たちに愛を込めて贈られる本書、ぜひ一度手に取ってみてはいかがでしょうか。
「SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術」ブレイク・スナイダー
一方こちらは、演じる側ではなく演じさせる側からの視点を描いた脚本術の入門書となります。
著者は『ハリウッドで最も成功した脚本家の1人』ともいわれるブレイク・スナイダー。12以上のオリジナル脚本を執筆し、20年以上にわたり全米脚本家組合の会員を務めた、アメリカが誇る名脚本家です。
本作はアメリカのAmazon 脚本術部門で売上No.1を記録したベストセラー。ブレイク・スナイダーの脚本執筆におけるテクニックやパターンがふんだんに散りばめられています。
脚本の作り方となると、役者としては普段考えることの少ない側面かもしれません。しかし表をより強く作り上げるためには、裏の構造を知ることが近道になるもの。本書では魅力的な主人公の条件や絶対に外さない10のジャンルなども解説されています。
プロにも素人にも役立つシンプルな脚本マニュアルですがキャスティングなどの基本要素も含みますので、売れる役者の法則も知っていきましょう。
また脚本の常識や黄金法則はエチュードの心強いヒントにもなります。スタートから惹きつけるキャラクター・短い時間でも起承転結をつける構成術を身に付けたい方にもおすすめです。
「イヴァナ・チャバックの演技術:俳優力で勝つための12段階式メソッド」イヴァナ・チャバック
イヴァナ・チャバックは『21世紀最高の演技コーチ』とも呼ばれる世界的権威の演劇コーチ。ロサンゼルスを拠点にして、ハリウッドをはじめ世界各国の演劇界で俳優指導を行っています。彼女が指導した俳優にはその後スターとなった者も多く、一部だけ抜粋しても以下のとおりです。その剛腕ぶりからハリウッドの秘密兵器とも称されています。
ブラッド・ピット/シャーリーズ・セロン/ハル・ベリー/ジェイク・ジレンホール/ジェームズ・フランコ/ジョン・ヴォイト/ジム・キャリー/メグ・ライアン
本書では自身が俳優に実践している「12段階式メソッド」を解説。とはいえ語り口はやわらかく、各メソッドで実践例を交えながら解説していきます。ハリウッド作品の意外な事実を知りながら読み進められる愉快な入門書です。
たとえば以下のシーンは彼女が実際にメソッドを踏まえて俳優と作り上げたプロット。事実この2作は彼らがスターへの階段を駆け上がるきっかけの1つとなりました。普段では絶対に知ることのないハリウッド式の役作りが多く見られるのも、この書籍のポイントです。
- ブラッド・ピットが「オーシャンズ11」で物を食べ続ける理由
- バリー・ペッパーが「プライベート・ライアン」で十字架にキスをする目的
日本ではまだ演技トレーナー自体の必要性が認知されていません。しかし役者には必ず核となる芝居論があります。自分では考えていなくても無意識に作られていき、芝居の好みも出来上がっていくものです。
そんな中で改めて自分と人生と芝居に真正面から向き合ってくれるのが「イヴァナ・チャバックの演技術」。自分を知るための解説書であり人間を演じるための取扱説明書といえるでしょう。
「類語辞典シリーズ」アンジェラ・アッカーマン
芝居を考えるとき「性格やトラウマ別の辞典があったら」と思った経験はないでしょうか。
役者は脚本を渡されたら残りの創造は全て自分次第。遭遇したことのない出来事や共感しにくいキャラクターであっても、理解と愛をもって想像力をフルに回転させなくてはいけません。
けれども天才でない限り、自分にない要素のイメージはどう振り絞っても限界が来てしまうものです。そこでおすすめしたいのが今回の類語辞典シリーズになります。シリーズを構成するのは以下の5作。
- 【感情類語辞典】
- 【性格類語辞典 [ポジティブ編]】
- 【性格類語辞典 [ネガティブ編]】
- 【場面設定類語辞典】
- 【トラウマ類語辞典】
どれも脚本とキャラクターを読み込むには欠かせない要素ばかりです。どれを手にするべきかは、あなたの個人的な課題によって異なります。
キャラクターに感情移入できない
脚本にある感情がなぜ起こるのか分からない
こうした悩みを抱きがちな人はまず「感情類語辞典」「性格類語辞典」を読んでいきましょう。
この辞典では感情が生まれる理由や性格を作り上げる要因を知ることができます。
すでにあるキャラクターを作るためには、そのキャラクターが歩んだ道を作ることが一番です。あなたが今日までの人生を経て今の性格になったように、キャラクターがそう在るための理由付けを行いましょう。
上記は役者をやっていると一度は遭遇する課題です。しかしそうしたドラマティックな場面こそ映画やドラマの最大の見せ場。役者はこうした非現実的なテーマであってもリアルに真に受けることが必要とされます。
そこで活躍するのがトラウマ類語辞典です。こちらは「両親の離婚」から「殺人の目撃」、果ては「テロ事件に遭遇する」「生き残るために人を殺す」といったものまで多種多様なトラウマが掲載されています。
トラウマの詳細を検索することで、その後の行動変化や人格形成についても知れるのがこの辞典のポイントです。役者として真にリアリティのある芝居を追求したいなら持っていて損はない一冊といえます。
場面設定類語辞典は主に脚本家にとってヒントの多い辞典となります。しかし役者であっても本書を使えばエチュードの克服も可能です。シーンが動く状況や出来事の導線にも触れていますので、場面設定からの展開までをイメージするのもOK。
「体育館の裏」「夜の海」、ありきたりな設定は観客も見飽きているものです。ぜひ新たなドラマが生まれることを目指して挑戦したことのない場面に立ってみてはいかがでしょうか。
「蜜蜂と遠雷」恩田陸
「聴く者に苦労が透けて見える曲など決して誰もひきつけることはできないだろう」
舞台は音楽界のニュースターを生む芳ヶ江国際ピアノコンクール。参加者には天衣無縫のギフトを授かった少年、風間塵。かつて天才少女として名を馳せたものの突然姿をくらました栄伝亜夜。仕事の傍らピアノを続ける高島明石。そして天賦の才と圧倒的なカリスマ性で優勝候補といわれるマサルが揃っていた。それぞれで全く異なる色を奏でる天才たちの競争が、いま幕を開ける。
『芸術とはなにか』答えるのは難しいもの。しかし本作はそんな永遠のテーマに一つの答えを導き出す珍しい作品です。ピアノを通して天才や凡才、努力家や奇才が集結するこの作品はまさに才能の展覧会。ラストページに描かれた結果発表には色んな才能のゴールが見えてきます。
- いま夢を追いながら才能に苦しむ人
- 才能がある友人との付き合いに悩む人
- 自分の表現に自信が持てなくなっている人
そんな人はぜひ彼らの行方を見届けてみてください。きっと自分が憧れていた才能の裏や、人から見えていると思っていた自分の才能の形が少し違って見えてくるはずです。
また、どのキャラクター感情移入してしまうかも面白いポイント。「人としてこの世に生まれ落ちた瞬間から誰もが持っているさみしさ」など思わず書き写したくなるような美しい言葉の数々も必見です。
最後に待ち受ける結果発表。
その結末はハッピーエンドかバッドエンドか
あなたはどちらに思うでしょうか。
本は永遠に学び続けられる資産
今回ご紹介した本は以下のとおり。
- 「俳優になりたいあなたへ」
- 「SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術」
- 「イヴァナ・チャバックの演技術:俳優力で勝つための12段階式メソッド」
- 「類語辞典シリーズ」
- 「蜜蜂と遠雷」
本は一度買ったらいつでも読み返すことのできる素敵な資産です。なかには最初に読んだ時あまり理解できなかったものもあるかもしれません。
しかし経験と挑戦を重ねていく内にハッと気付いたり理解したりできるのが人生かつ醍醐味。いまの自分に必要だと思ったなら、悩まずどんどん投資していきましょう。
今回の本があなたの人生をより豊かにしてくれることを願っています。